■安全配慮義務とメンタルヘルス
■安全配慮義務とメンタルヘルス
こんにちは。
社会保険労務士 沖本事務所です。
ここまで安全配慮義務については、次の記事で触れてきました。
「安全配慮義務について」
「安全配慮義務の歴史」
今回は、「安全配慮義務とメンタルヘルス」についてのお話しです。
安全配慮義務は、かつては製造業等の機械設備や有害物質を取り扱う場面で問題とされていました。
近年は長時間に及ぶ過重労働による過労死や自殺のような精神衛生面についても安全配慮義務を問われています。
代表的なものとしては、2000年3月24日の最高裁判決があります。
大手広告代理店に勤務する入社2年目の若手社員が、長時間労働によって精神疾患(うつ病)を発症し自殺したケースについて、会社の安全配慮義務違反を認めました。
自殺をされた方が大手広告代理店に入社をされたのは1990年、自殺は1991年です。
1991年と言えば、私は大学で労働基準法のゼミに入っておりました。その頃の日本は年間総実労働時間が2000時間前後だったと記憶しています。これを1800時間台に削減するために、フレックス勤務や変形労働時間という新しい労働時間管理手法を一生懸命学んでいました。
厚生労働白書によれば、平成24年の総実労働時間は1765時間になっています。
そういえば、平成の最初の頃に頻繁に聞いていた「過労死」という言葉は聞かなくなったような気もします。
ただ、それは転職が当たり前になって来て、労働者が過労死する前に会社を辞めるようになったからであって、過重労働自体は今でも存在していると個人的には推測しています。
また、職場の人間関係から精神疾患を発症する方が増えているように感じます。
いずれにしましても、業務上に発生した心身症や精神疾患についても安全配慮義務を問われる可能性があり、各企業はメンタルヘルス対策が必要になっています。
メンタルヘルス対策としては次のようなものが考えられます。
- 経営TOP自らが強力な主体性を発揮して、メンタルヘルス対策に取り組みことを宣言し、メンタルヘルスに関する社内方針を定めること。
- メンタルヘルス教育を実施すること。
- どのような言動や症状が出たらメンタルヘルスを疑うべきか
- どこに相談するべきか
- 実際に発症した場合の対応方法
等々、経営層、管理監督者、従業員が情報共有できていることが重要です。
- 労働時間の管理を正しく行い、労働安全衛生法に規定する産業医面談の対象になる過重労働者については、産業医面談を実施し、心身の健康状態を常に把握しておくこと。
メンタルヘルス対策については、今後専用のページを設けて、充実させていきたいと考えています。
【2015年12月1日追記】
2015年12月1日より、メンタルヘルス対策の充実・強化等を目的として、従業員数50人以上の全ての事業場にストレスチェックの実施を義務付ける「労働安全衛生法の一部を改正する法律(通称:ストレスチェック義務化)」が施行されます。
弊所ではストレスチェックの実施やメンタルヘルス相談についても、外部機関と連携し、お客様をフォローさせていただきます。