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■労災保険給付と自賠責保険の請求権について

■労災保険給付と自賠責保険の請求権について

こんにちは。
社会保険労務士 沖本事務所です。

今日は土曜日なのですね。自由業になってから曜日の感覚がありません。

さて前回は、業務災害や通勤災害の被災者は労災保険給付と民事上の損害賠償請求権があるため、労災保険法第12条の4において二重補償を回避する仕組みがあるとお知らせしました。

この民事上の損害賠償請求権には、被災者が交通事故に遭遇した場合の加害者の自賠責保険の請求権も含まれます。

自動車事故の場合、労災保険と自賠責保険のどちらを使うほうがよいのでしょうか。

厚生労働省の通達には、以下のような記述があります。

第三者行為による災害の大半は交通事故であり、この場合には自動車損害賠償保険と競合することが多い。この場合の労災保険との調整は自賠責保険を加害者側として処理が行われる。どちらの保険を先に請求するかは被災労働者側の自由であるが、厚労省では自賠責保険を先行し不足分を労災保険で給付することを希望している。(自動車賠償保険と労災保険炉の支払調整について 昭41.12.16基発1305号)

厚生労働省としては自賠責保険請求を先行させることを希望していますが、強制力があるわけではありません。

先に労災保険を使用したほうが良い場合

交通事故で被災した労働者が労災(指定)病院で怪我の治療を受ける場合、どちらを使うかを自由に選択することができます。

しかし、次のようなケースでは「労災保険の先行願い」を労災病院に対して行ったほうがよいでしょう。

  • 被災者側の過失割合が大きい場合または過失割合で加害者側ともめている場合
    自動車事故には過失割合というものがあり、被災者に7割を超える重大な過失があった場合には、損害額から20%~50%減額されて支払われます。
    この点、労災保険には過失割合という概念がありません。
  • 相手の車の所有者が、運行供用者責任を認めない場合
    もし加害者の車が盗難車だった場合、事故車の所有者としてはなぜ自分が補償しなくてはならないのかと主張し、運行供用者責任を認めない場合があります。
    このような場合は、先に労災保険給付を選択し、政府から加害者に求償してもらうほうがよいでしょう。
  • 加害者が無保険または任意保険未加入
    自賠責すら加入していない場合は論外ですが、任意保険未加入の場合も先に労災保険給付を使うべきでしょう。
    • 自賠責保険には上限額がある
      自賠責保険は労災保険給付と異なり慰謝料が出ますが、慰謝料も含めて保険金の限度額は死亡3,000万円・怪我120万円となっており、限度額を超える部分は加害者側負担となるため、加害者が支払う意思と経済力を持っているかどうかが不安です。
    • 自賠責保険による診療は自由診療扱い
      健康保険や労災保険の診療報酬の単価は予め決められていますが、自賠責保険の場合は医療機関が自由に設定できるため、高い単価を設定している医療機関では治療費だけで上限額120万円を使い切る可能性があります。使い切った場合は慰謝料は支払われなくなります。

先に自賠責保険を使用(自賠責先行)した方がよいケース

加害者が対人無制限の任意保健に加入している、被災者の過失割合が極めて低い、長期間の休業を要しないような怪我の場合等が考えられます。
理由としては次の点を挙げることができます。

  • 自賠責には「慰謝料」があります(労災保険はなし)。
  • 療養費の対象範囲が労災保険より広い。
  • 休業した場合、休業損害は100%カバーされる。
    労災保険の場合、休業(補償)給付として給付基礎日額の60%と休業特別支給金として給付基礎日額の20%の合計80%までしか補償されません。
    なお、休業(補償)給付と休業特別支給金は休業4日目からの支給となります。 
  • 仮渡金制度、内払金制度などがあり、給付金を速く受け取ることができる。

自賠責保険を使っても、休業特別支給金は請求できます

これは休業(補償)給付は保険給付、休業特別支給金は社会復帰促進等事業に基づくものとして、労災保険法の中でそれぞれ異なる制度とされているためです。

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